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任意後見制度について

任意後見制度

 任意後見制度を簡単に言うと、万が一本人が認知症などの病にかかった際に、その後の余生をどのように送りたいのかをあらかじめ決める事ができる制度です。

 よって、本人に十分な判断能力がある段階でしか利用ができません。
 

 具体的な利用方法を簡単に説明すると、自らが選んだ代理人(以下「任意後見人」といいます)に対して、将来、自分の判断能力が不十分になった後の生活、例えば療養看護や財産管理(詳しくは下記利用手順(1)参照)に関する事務についてどのようにしてほしいのかを公正証書を用いて取り決めておきます(以下「任意後見契約」といいます。)。

 そして、本人の判断能力が低下した後に任意後見人との間で締結した任意後見契約で定めた事務(以下「仕事」といいます)を任意後見人にしてもらいます。

 なお、任意後見人が行う仕事は、家庭裁判所が選任する監督人(以下「任意後見監督人」といいます)が本人の代わりに監督をします。これにより、任意後見人による不正、本人の意図とそぐわない仕事が防止されます。よって、本人に判断能力無くなった後も、本人の意思にしたがった適切な保護・支援がされることが可能となります。(個別的なご相談はこちらから)

 

利用手順(申立~審判)

 任意後見制度の利用手順は大きく6つに分類することができます。

(1)任意後見契約の内容と委任する人物を決める

 将来判断能力が低下した際に、委任したい仕事と委任したい人物を決めます。よって、判断能力が低下するまでは任意後見人は仕事ができません(なお、判断能力が低下するまでの期間も財産を管理してほしい場合は別途、財産管理契約を締結します。)。任意後見人の具体的な仕事の内容は、本人の「財産の管理」と「療養看護」が基本になってくるかと思います。

 
 「財産管理」とは、自宅等の不動産や預貯金等の管理、年金の管理、税金や公共料金の支払い等々です。

 「療養看護」とは、要介護認定の申請等に関する諸手続、介護サービス提供機関との介護サービス提供契約の締結、介護費用の支払い、医療契約の締結、入院の手続、入院費用の支払い、生活費を届けたり送金したりする行為、老人ホームへ入居する場合の体験入居の手配や入居契約を締結する行為等々です。

 なお、任意後見人の基本的な仕事は上述のとおりですが、任意後見契約は契約ですので法律の趣旨に反しない限り、当事者双方の合意によりその内容を自由に決めることができます。

 また、成年であれば誰でも任意後見人になれます。しかし、家庭裁判所で解任された法定代理人・保佐人・補助人、破産者、行方の知れない者、本人に対して訴訟をし又はした者及びその配偶者並びに直系血族、不正な行為・著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者等は任意後見人になることができません(任意後見契約に関する法律第4条)。

(2)任意後見契約を締結する

 任意後見契約を締結するには、公正証書でしなければなりません(同法第3条)。よって、公証役場に行き、任意後見契約を締結します。なお、本人が公証役場にいけない場合には公証人に出張をしてもらうこともできます。

 公正証書を必要とする理由は、本人の意思をしっかりと正確に確認する必要があること(契約時点で本人に判断能力があるか否かも)、また、契約の内容が法律に従った内容になるようにする為です。

(3)本人の判断能力が低下する

 本人と見守り契約を締結した任意後見人候補者は定期的に本人と面談をし、認知症等により本人の判断能力が低下していないかを確認します。

(4)家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立て

 本人に判断能力が低下した時点で、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見人になることを引き受けた人(「任意後見受任者」といいます。)が、本人の同意を得て(本人が意思表示ができない場合は不要です)、家庭裁判所に対して本人の判断能力が衰え、任意後見事務を開始する必要が生じたので「任意後見監督人」を選任して欲しい旨の申立てをします(同法第4条)。

 そして、家庭裁判所が任意後見人を監督する「任意後見監督人」を選任します。これにより、任意後見受任者は、「任意後見人」として任意後見契約に定められた仕事を開始することになります。

(5)任意後見監督人選任、任意後見人の支援が開始

 任意後見契約に定められた仕事をします。任意後見人は、仕事を行うに当たり、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(同法第6条)。

(6)任意後見契約の終了

 任意後見契約は、以下の事由の発生によって終了します。

□ 任意後見人の解任
 任意後見人に不正行為、著しい非行跡、その他任意後見人としてふさわしくない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見人を解任することができます(同法第8条)。 任意後見人が解任されると、任意後見契約は自動的に終了します。

□ 任意後見契約の解除
 任意後見契約も一般の委任契約と同様に解除することができますが、特別の規定があります。
 つまり、任意後見が開始された(任意後見監督人が選任された)後は、正当な事由がある場合にのみ家庭裁判所の許可をもって解除することができます(同法第9条2項)。
 任意後見人の債務不履行等で本人の側から解除する場合も、同様です。
 なお、任意後見の開始(任意後見監督人の選任)前は、いつでも公証人の認証ある書面によって解除することができます(同法第9条1項)。

□ 民法上の委任の終了事由
 任意後見契約も委任契約の一種ですから、民法が定める委任の終了事由によって終了します。委任の終了事由は、本人の死亡・破産 、任意後見人の死亡・破産、任意人後見人が後見開始の審判を受けたときになります(民法第653条)。

 本人の死亡以外で任意後見契約が終了した場合には、引き続き本人への援助が必要であっても、あらたに任意後見契約を締結することはできません(本人に判断能力が無いので)。よって、法定後見人選任の申立手続をとることになります。

申立に必要な書類

 任意後見契約を締結するのに必要となる資料は、下記のとおりです(なお、発行後3か月以内のものに限ります)。

本人について

  • 実印及び印鑑証明書
  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 本人確認資料(免許証、パスポートなど)

任意後見受任者について

  • 実印及び印鑑証明書
  • 住民票
  • 本人確認資料(免許証、パスポートなど)

必要となる費用(実費)

  • 公証役場の手数料     
     1契約につき11,000円、それに証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。
  • 法務局に納める印紙代   2,600円
  • 法務局への登記嘱託料   1,400円
  • 書留郵便料         約540円
  • 正本謄本の作成手数料   1枚250円×枚数
     
     なお、任意後見契約と併せて通常の委任契約(財産管理・見守り等)をも締結する場合には、その委任契約についてさらに上記1が必要になり、委任契約が有償のときは、1の額が増額される場合があります。
     また、受任者が複数になると(共同してのみ権限を行使できる場合は別として)、受任者の数だけ契約の数が増えることになり、その分だけ費用も増えることになります。

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